台湾の老街(オールドストリート)の魅力にすっかり取りつかれてしまった私。そんな私がどうしても行ってみたかった老街のひとつがここ、「平渓老街」です。
この日は、MRT文湖線木柵駅から1日乗り放題バスの「台湾好行・木柵平渓線」で出発。窓から見える自然や寺院など、どれも初めてみる景色ばかりで、1時間以上の道のりもあっという間に感じました。
平渓で下車し、しばらく道なりに歩いていくと、「平渓老街」と書かれた雰囲気のある木の看板が。視界の奥には山々が連なっており、車やバイクも少なく、静かな時間の流れに包み込まれます。どこまでも続く基隆河。そこに掛かった橋を渡ると、いざ炭鉱で栄えた古き良き街のお目見えです。
*石炭産業が最盛期を向かえたのは大正7年ごろから。人口が急激に増加し、平渓郷には新たに平渓村、石底村、菁桐坑、十分集落が形成された。現在もつり橋・滝・洋館など、各地に自然遺産や古跡が残されている。
ゆったりとした時間が流れるノスタルジーな街
橋を渡ると、土産小物や特産物など、開け放しの小さな商店が連なっています。ここが老街のメインロードです。観光地特有の呼び込みなどはなく、かといって寂れているという雰囲気でもありません。隣あった店の主人同士で井戸端会議をするなど、平和で穏やかな日常、といった様相です。
途中、炭焼きフランクフルトの店を右に曲がってみました。
左手の方に線路が見えます。あとでご紹介しますが、平渓といえばローカル電車が通っていることで有名です。右手にはなんともレトロな注意看板が。何十年前からここにあるのでしょうか。
ゆるやかなカーブの坂が続きます。
レンガ調の建物が並ぶこの路地は、1階部分がほとんど商店になっています。桐の花模様が美しい客家グッズ専門店や、本格的な仙草茶がいただける専門店などが営業していました。ちょうど坂を上りきったところには、老街の景色や1時間に数本しかやってこない電車を眺めることができるカフェが。やはり人気なのか、私が着いたときにはすでに満席でした。
現役で使われている線路がこんなにも間近まで接近できるとは、なんだか不思議な気分です。
平渓といえばランタン!
平渓老街で忘れてはいけないのが、「ランタン」です。画仙紙で形を作り、下からの熱で空高く浮かびあがらせます。
もともとランタンというのは、戦況をいち早く伝えたり、盗賊から避難した人たちへ帰宅の合図を送るなど、伝達・連絡の手段として使われていたそうです。その後、天に願い事をするために上げるという習慣が根付き、今に到るといわれています。
私もまだ写真でしか見たことがありませんが、毎年元宵節の時期に開催されるランタンまつりで一斉に上げられる光景は、都会の夜景にも劣らないほど幻想的で美しいものです。
街のあちらこちらで見かけるランタンをモチーフにした看板や土産物にも目が留まります。
実はランタンまつりの時期以外でも、気軽にランタンをあげることができます。平渓老街の中に数箇所あり、願い事によって色分けされたランタンを200元ていど(約680円)で空にあげることができるサービスです。観光している最中にも、色とりどりのランタンが空に舞い上がっているのを見かけました。
平渓老街の見どころ、ここをチェック!
平渓老街に行ったらぜひとも抑えておきたい観光ポイントがいくつかあります。
メインロードを道なりに歩くと左手に郵便局が見えます。そこに昔から設置されている、緑色のポストがまずひとつめのポイントです。台湾に今あるポストの中で一番古いそうで、日治時代に設置されたのだとか。決して派手なものではありませんが、観光客はここで記念撮影をするのがお決まりのようになっていました。
そこから少し先を左に曲がり、森の中を歩くように坂道を進んで行くと、ひときわきらびやかな「観音巌」というお寺が見えてきます。静かでノスタルジーな街の雰囲気とは対照的に、派手な色使いがまぶしすぎるほど、ゴージャスな存在感です。
お寺を横切りさらに奥へ進むと、山の壁に人がギリギリ入れそうな大きさの穴が5つ開いているのがわかります。ここが3つめのポイント、日治時代の防空壕です。5つの入り口は中で繋がっています。蒸し暑い日でしたが、入り口付近に近寄ると、心なしかひんやりとした空気を感じました。
壁の上方は小高い丘になっています。
この丘、実は戦時中に監視塔が設置されていた場所なのだそうです。今残っているのは、写真の警鐘塔、それも鐘はすでに撤去されてしまったので、囲いだけです。さらにさらに、この囲いも不安定なため、「近づかないでください」と張り紙が。日本が戦時中に残してきたものですが、今後見られなくなってしまう可能性もありそうです。
地図にはありませんが、先ほどの防空壕のあたりから、老街のメインロードの方向へ戻る階段があります。階段を下りると、遠くまでつづく線路と街の景色が見渡せる、絶好の撮影ポイントに行き着きました。運がよければ走る電車を間近で見ることもできます。駅の時刻表であらかじめ時刻表をチェックしておくのも良いでしょう。
やっぱり楽しい食べ歩き
観光へやってきたら、やっぱり欠かせないのが地元グルメ。ひときわ賑わっていたのは、メインロードの中央あたりで営業している炭焼きフランクフルトのお店です。なぜか同じものを売る店が向かい合っていて、競うようにひたすらフランクフルトを焼いています。味は10種類ほどあり、縦に切り込みを入れた腸詰に具材やソースを挟めているのが特徴的です。私は空いているほうの店に並び、九層塔(台湾バジル)をいただきました。香ばしくて美味しかったです!
ふわふわスイーツの豆花や、ほんのり甘くて体に嬉しい仙草茶、老舗の豆干店やお芋を焼いた庶民的なおやつなど、観光しながら食べるのにぴったりな小吃が所々で売られています。
ここで私の失敗談をひとつ。この日平渓老街に到着したのは午後2時過ぎ。観光地とはいえ、飲食店は中休みに入っているところが多く、あえなく断念したグルメがいくつもありました……。堪能したい方は、お昼どきか夕方以降を狙って足を運んでみてくださいね。
江ノ島電鉄と提携!話題のローカル線にも乗ってみました
せっかくなので、帰路は平渓線を利用することに。ローカル線とはいっても、外観はとってもカラフルです。昨年には日本でおなじみのローカル線、江ノ島電鉄と提携したことでも話題を集めました。
かつて炭鉱の街として栄えた平渓郷で、炭鉱の運搬用に建設されたのが現在の平渓線です。その後、海外との価格競争に勝てず、炭鉱業は衰退の一途を辿ります。しかしながら、街を支え続けた電鉄だけは廃線することなく今も残り、炭鉱業で一時代を築いた確かな証となっているのです。
駅舎が改装工事中だったので見栄えがイマイチですが、劣化が進んでいたのでしょう。ぜひともローカル感はそのまま残してほしいものです。運行本数が少ないため、ホームには電車を待つたくさんの人で溢れていました。頭上にある、ランタンをモチーフにしたライトがさすがは平渓。陽が落ちるにつれより美しさが増してきます。
待ち時間はおよそ30分。駅舎の中にある土産物屋をのぞいてみました。やはりランタングッズが中心で、お守りのように持ち歩ける小さなキーホルダーや携帯ストラップが人気のようでした。
オレンジ色のライトを見ていると、不思議と心が和みます。このあと、1時間ほど電車に揺られて瑞芳駅で下車。余韻にひたりつつ、桃園・新竹方面の電車に乗り換え、台北まで帰りました。
初めてなのにどこか懐かしい、大人の旅にぴったりな平渓老街に、一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
【平渓老街】
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A:MRT木柵駅バスステーション
B:平渓バスステーション
C:平渓線平渓駅