台湾歴史百景にも選ばれている「松園別館」にやってきました。相変わらずお天気の良くない日が続いていましたが、花蓮市中心部からのアクセスが良いこともあって、午前中から多くの観光客が集まっています。
松園別館とは
高台から花蓮港を見渡せる好条件の立地であることから、日本統治時代は軍の重要な拠点となっていました。さらに、雨風をしのぎ、外から見えにくくするため、100本を越える松の木が沖縄から移植されたのです。多くの日本兵士もこの松の木を見て祖国を回顧したことでしょう…。現在は文芸館として利用されています。私が2度にわたって訪れたときは、水墨画展や、詩の展示(太平洋詩歌節)などが行われていました。事前に予約をすればDIY体験に参加することも可能です。
敷地内に入るとまず目に入ってくるのが、防空壕と爆薬庫の扉です。戦時中に使われていたものがそのまま残されていてなんともリアル(写真左の扉は2003年に改修)。日本でもなかなか見ることはできない、生々しくも貴重な遺構です。
グレーの建物は少々薄暗い印象もありますが、回廊を歩いてみると、水色の壁に白い窓枠、光がよく差し込み、明るくさわやかな内装です。1階には桐の花をモチーフとした客家文化のグッズやナチュラル雑貨のお店、休憩するのに丁度良いカフェが、2階には松園別館の歴史を知る資料が展示されていたり、美術展が定期的に行われたりしています。
これは1階の回廊から外を眺めた様子です。地面から1段高くなっていて見晴らしが良く、遠くの様子まで伺うことができます。
長いもので100年あまりこの地で生き続けている松の木たちは、まるで「二度とバカな真似はするな」と、訪れる人たちに向かって語りかけているようにも思えました。
こちらが2階から見た景色です。松の木で隠れてしまっていますが、向こう側にはこのあたりで最初に栄えた街、花蓮港が見えます。病気や老いでやむを得ず伐採された松の木は、庭の途中にあるベンチに使われているのでぜひ注目してみてください。
建物の裏手にまわると、大きな池が見え、その横に改築された木造小屋があります。ここはかつて、神風特攻隊が出発前に御前酒を飲んだ場所。戦後はこの小屋の前で、重要な機密文書が焼き払われた、なんていう話もあります。
そんな悲しいエピソードを持つこの場所も、現在は観光をはじめ、校外活動やウエディングフォトアルバムの撮影地になるなど、すっかり明るい雰囲気です。これはひとえに、貴重な古跡の保存と活用に携わった地元の方々のおかげだといえるでしょう。花蓮市内に宿泊する方にはとくに足を運んでみていただきたい場所のひとつです。
【松園別館】
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(地図B地点)