今からちょうど1年前ぐらいの話です。私は1週間の日程で、西門町駅の目の前にあるゲストハウスに滞在していました。西門町といえば、台北きっての繁華街。流行の発信地とも呼ばれ、日中から夜遅くまで若者たちで賑わっています。
滞在して2日目、アルコールラブな私は、ゲストハウス近くにお気に入りのバーをすでに見つけていました。オープンスペースのテラスに時おり吹く秋風はなんとも心地よく、夜になると、必ずそのバーに顔を出すようになっていたんです。ホールの従業員は20代半ばぐらいの男性2人。お客さんの呼び込みも積極的で、それなりに繁盛している様子でした。
2人の従業員がいるといいましたが、ひとりは大人しくて真面目そうなタイプ。もうひとりは、今どきのおしゃれでイケメン風なタイプでした。このイケメン風な彼なんですけど、チャラチャラしているようで実は3ヶ国語(中・英・日)を話せたりなんかする、ちょっと意識高めな成年なのです。
私は一週間のうちほぼ毎晩その店に居たので、そのイケメン風男子と話す機会もそこそこありました。私の中国語はまだそれほど…というか全然ダメな時期だったので、英語や日本語を交えながら、なんとか会話を成立させていた感じです。彼は明るくてノリが良く、ほかのお客さんとも積極的に話をしていました。きっと台湾女子からモテるのはこういうタイプなんだろうなぁといった印象です。
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最終日だったでしょうか。私が連日のようにスマホをいじりながらひとりで飲んでいると、私より先に来ていたドバイからの出張族の男性が「そろそろチェックするよ」と声を掛けました。イケメン風男子はドバイ男性のところまで行って支払いを受け取り、レジへ向かいます。お釣りを持って戻ってきたイケメン風男子に、ドバイ男性はチップとして50元を渡しました。するとそのイケメン風男性は、「Thank you!」といいながら、その50元を文字通り“もぎとった”のです。
なんだか見たくないものを見てしまったなぁ…という気分でした。たしかにこのお店は、オープンスペースで外からも中の様子が分かりやすく、外国人観光客がいかにも好んで来そうな場所です。日本人はともかく、欧米人ならすすんでチップを差し出す人も多いことでしょう。(以前の記事にも書きましたが、台湾ではそれほどチップという習慣が根付いている国ではありません)
そういったお客さんに慣れてしまっていることもあってなのかはわかりませんが、とにかく、お金をもぎ取るという光景には複雑な思いを抱かされました。ドバイ男性もさすがに苦笑。楽しい時間を過ごしたさいごにチップをもぎ取られたんじゃあ興ざめです。
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西門町や中山駅周辺など外国人観光客の多い繁華街なんかは、たまにチップ慣れした店員さんがいます。そういうお店に行ったときは、「どうしようかなぁ」と私も悩むところです。ただ、楽しい時間が過ごせたときは、ささやかな気持ちを置いていくようにはしています。さすがにもぎとられたり相手から要求されたことはありませんが、わずかなお給料以外の収入を期待して、そのために楽しませてくれようと努力してるんであれば、無駄なお金ではないかなぁと思っています。
かの男子は、そのルックスと語学力、サービス精神でどれだけのチップを稼いだのだろうとふと考えてしまいました。地元の方に言わせると、「チップなんて渡す必要ないよ」という声が圧倒的ですが…あとはみなさんのご自由に(^^)