台湾の世界遺産候補地「金瓜石・黄金博物園区」

金瓜石・九份・平渓・北海岸 世界遺産候補地

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金瓜石・黄金博物園区

異国の観光地に足を踏み入れ、雄大な景色や歴史建築物をただ珍しげに眺めるだけでは終われないのが台湾の旅。

なぜなら、ご存知の方も多いかと思いますが、日本はかつて台湾を統治していました。その間に現地で造りあげた文化や建物などの多くは、長い年月を経た今でも消えることなく、大切に残されています。ですので、台湾で古い日本式家屋や建造物を見ると、私はどうも、人ごとのようには思えないのです。

私たちの祖先が台湾で作りあげ、残してきたものの多くは、日本ではほとんど語り継がれることもなく、忘れ去られてしまっています。


その中のひとつが、新北市瑞芳区にある「金瓜石・黄金博物園区」です。私は先日、ここに足を運んできました。そこには、日本では一度も見聞きしたことのなかった日台の歴史の一部が、たしかに刻まれていたのです。



金瓜石集落の歴史概要












清の時代に、金瓜石とすぐ近くの九份で金鉱が発見されました。日本統治時代に突入したのち、多額の費用を投入して、ただちに機械や建物の整備を行い、たちまち東北アジア一の鉱山となったのです。

ピークを迎えた1930年ごろには、学校や病院、スポーツ施設や神社など、従業員たちが暮らすための設備が整えられ、季節の行事がおこなわれるなど大変賑わう町でした。

第二次世界大戦後、中国に没収された金瓜石は再び採掘が開始されたのですが、次第に採掘量は減少し、1987年、ついに閉山のときを迎えます。



世界遺産登録に向けて


本山第五坑道










閉山後、黄金の夢に沸いたかつての活気はすっかり失われてしまいました。

現在、当時建設された坑道や日本人宿舎、神社や太子賓館など、歴史ある建築物や周辺の自然と景観を保存・活用し、観光地として再び盛り上げようとする動きが活発です。地元の努力もあり、台湾政府の了承を得て世界遺産候補地にも加えられています。

産業が近代化する過程の中で残された建築物や機械、文書など歴史的価値のあるものが、日本では「近代化産業遺産」と呼ばれています(参考:経済産業省)。金瓜石鉱山とその周辺も、この近代化産業遺産にあたるといえるでしょう。



金瓜石集落を観光する












近代化産業遺産というと、物静かでさびれたイメージを持つ方も多いかもしれません。実際に行ってみるとわかりますが、そういったイメージとは正反対です。

単に写真と資料を見て周るだけではなく、そこへタイムスリップしたかのような感覚が味わえる展示方法だったり、砂金採りや坑道の中を歩くなど、地域全体が“体験できる博物園”となっているんです。丸1日かけてやっと全てをじっくり見学できるかというぐらい広大な敷地で、若者やカップルの姿も目立ちます。





かつて日本が台湾に置いてきたものを、人々が新しい形で再生させようと尽力していることを知ったとき、微力ながらも応援せずにはいられないと感じました。

台湾の歴史や文化に興味がある、年代物の産業機械に魅力を感じる、美しい夕日が見たい、理由はなんでも良いと思います。この地に興味を持ち、足を運んで盛り上げることが、金瓜石集落の保存と世界遺産登録を目指す地元の方々にとっての願いなのです。





【金瓜石・黄金博物園区】


住所 新北瑞芳区金瓜石金光路8號
開園時間 月~金→9:30~17:00
土日祝→9:30~18:00
休園日 毎月第1月曜日、旧正月前後
入園料 無料(体験活動を除く)
アクセス 《電車》台北駅から東部幹線の宜蘭・花蓮方面行き列車で瑞芳駅へ。
駅前広場のバス停から金瓜石行きの基隆客運(バス)に乗り、終点で下車する。
《バス》MRT忠孝復興駅1番出口前から基隆客運(バス)に乗り、
終点金瓜石で下車する。基隆駅からも同じバスが出ている。
公式サイト 黄金博物園区




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