台湾の世界遺産候補地「紅毛城と周辺の建築群」を歩く【淡江中学・真理大学編】

世界遺産候補地 淡水:見る・歩く

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淡江高級中学

淡水の世界遺産候補地をめぐる旅、つづいては淡江高級中学へやってきました。


1882年、この地に新しい教育の場が必要だと考えていたカナダの宣教師マッカイ博士は、自身の故郷であるカナダ・オンタリオ州・オックスフォード郡で基金を募り、集まった6000ドルあまりを学校の建設に当てました。




真理大学
真理大学教堂。牛津学堂もこの敷地内にある。

この学校は当初、博士の故郷の名を取って、「オックスフォードカレッジ(中国語名:理学堂大書院)」という名前が付けられていました。オックスフォードという都市の名は中国語で「牛津」と書くことから、別名「牛津学堂」とも呼ばれます。

その後、台湾ではじめての女子学校も建設されました。纏足(てんそく)*1の習慣があったことからもわかるように、文字の読み書きもろくにできず、女性の権利が軽視されていたこの時代においてはとても斬新なことだったそうです。

現在は幼稚園から大学までの一貫教育が行われており、淡江中学・真理大学ともに一般人の自由見学が特別に認められています。

*1・・・当時の中国や台湾では、女性は足が小さければ小さいほど美しいとされ、幼いころから紐で硬くしばって無理やり小さくする行為が平然と行われていた。




  

左上の写真は、現在も学生たちが通う教室です。中からは先生や生徒たちの声が聞こえてきました。実は、かの有名な周杰倫(ジェイチョウ)や台湾民主化の父と呼ばれる前総統・李登輝氏もこの学校の出身者です。授業の邪魔にならないよう静かに見学しながら歩きます。

ふと地面を見ると、真ん中にレンガの道がずっと続いていることがわかります。昔は男子生徒と女子生徒は同じ道を歩くことを禁止されていたため、このような境界線が引かれていたのだそうです。








埔頂鐘聲

日治時代の台湾総督府によって正式に学校として認可されたのが1914年。それから90周年の節目で建設されたのが、写真にある「埔頂鐘聲」という大きな鐘です。目の前は小さな庭園が造られていて独特な風情を感じることができます。




八角塔
中華と西洋の文化が混合した八角塔。

こちらは1925年に建てられた「八角塔」です。中央の部分が八角形になっていて、この学校の教訓である「信望愛(信仰・希望・愛)」を象徴するものとして造られたといいます。西洋の建築技術に地元の建材を使った美しい建物で、過去にはドラマ「不能說的·秘密(言えない秘密・ジェイチョウ主演・2007年公開)」の撮影地になったことでも有名です。





最後に訪れたのは、マッカイ博士の墓園です。博士は、自らが開いた学校で一度も授業をしないまま病魔に襲われます。いよいよ迎えの時間が来たことを悟ったとき、家族や交代で看護する学生たちが注意をそらした隙に突如走って学校へ行き、鐘を鳴らして学生たちを集め、最後の授業を行いました。

生前の遺言通り淡江中学敷地内の個人墓地に埋葬され、現在もなお、台湾北部におけるキリシタンの聖地になっています。





マッカイ博士なしにこの街は語れない、という意味がおわかりいただけたでしょうか。淡水の美しい景色と風情あふれる町並みに魅せられた方に、マッカイ博士の軌跡をたどる旅もおすすめしたいと思います。




【淡江高級中学・真理大学】


住所 新北市淡水區真理街26號
入場料 無料
アクセス MRT淡水駅で下車、徒歩15~20分。
タクシーで5分ていど。


(淡江中学はA地点、真理大学はB地点)




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