【台湾ホームステイ体験記】(3)日本人らしさと自分らしさと

台湾ホームステイ体験談

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台湾の家庭料理










海外から見た日本人のイメージでよく言われるのは、礼儀正しく、マナーを守り、何事も細かく丁寧、といったところでしょうか。私がホームステイをさせてもらった家庭でも、それは例外ではありませんでした。


日本人らしさへの勝手なプレッシャー


あれは確か3日目の夜だったと思います。前回の記事でもお話ししたように、挨拶もできないまま、気まずい思いで夕食の席についていました。

すると食事の最中、なにやら皆が中国語で私のことについて話しています。よくよく聞いてみると、食事中の私の姿勢がとても良く、これもマナーや礼儀を重んじる日本人だからだろう、という内容でした。

私は正直とまどいました。私はもともと猫背で、どちらかというと姿勢が悪いタイプ。ただただ緊張していただけなのです。

台湾の食事のマナーといえば、日本の目線から見るとかなりゆるいというか、細かい決まりがそれほどありません。また、日本ではアリエナイようなことが、台湾ではマナーだとされていることもいくつかあります。


例を挙げると、台湾では、食事の初めと終わりに「いただきます」や「ごちそうさまでした」と言う習慣があまりありません。それにあたる中国語は一応あるのですが、それほど一般的ではないようです。無言で食べ始め、無言で食べ終える光景が、初めはなんとも滑稽に思えました。

それから、これは帰国したあとに中華圏に詳しい人からチラッと伺って「そういえばそうだ!」と思った話です。台湾の家庭料理には、お肉を骨ごとだとか、エビを殻ごとだなんていう料理がけっこうあります。そして食べ終わった“ガラ”をどうするのかというと、そのままテーブルの上に放置するんですよね。

私はそのとき思いました。これは家族間の中でだからやってることで、本当は(こんな汚い食べ方は)ダメなはずだと。よそ者の私はキチンと自分の器に入れなくちゃ……というのが、実は大間違いでした。食べて残ったものをまた器に戻すというのは、台湾ではマナー違反だったのです。





もとい、日本には台湾と比べて、食事に限らずマナーや決まりごとが多く、細かい部分を気にする人が多いというのは否定できません。ただ、私が食事の時間中、つねに背筋ピーン!だったのは、ただ緊張していただけなんです。同じ日本人から見ても突っ込まれるぐらい、背筋ピーン!です。


「日本人らしいね」というのが褒め言葉だったのかはわかりません。ただそれからの私は、彼らの想像する“日本人像”を壊してはいけないんじゃないか、私せいで日本人のイメージが悪いものになってしまったら最悪だ、なんて、勝手な責任感を感じるようになっていたのです。

1週間の滞在のあいだ、最低でも1日に1度は家族と食事をする機会がありました。私は、絶えず姿勢をピンッと張り、いわゆる伝統的な礼儀やマナーを守る日本人を演じようとしたのです。



個人を尊重する台湾で“日本人らしさ”はいらない


ところが実際には、思ったとおりに演じきることはできませんでした。なぜなら、やはりそれは本来の自分の姿とは違うからにほかなりません。前回の記事に書いた、挨拶ができないなんて話はいい例です。


今になって思うと、もっと皆のイメージを、良い意味でブチ壊せばよかったかな、なんて思っています。日本人女性は皆、おとなしくて、慎ましやかな大和撫子だなんて、現代の日本人が聞いたら笑ってしまうでしょう。

だからいっそのこと、楽天的で、ちょっといい加減で、言いたい事はとりあえず言ってみるっていうような本来の自分を、もっと出してみれば良かったなぁと。「日本人でもこういう人がいるんだぁ!」ってビックリさせるぐらいのこと、すればよかったです。

そのほうが、ステイ先の家族もむやみに私に気を使う必要もなかっただろうし、私も自分らしくいられて気楽だし、お互いにもっとハッピーな時間を過ごせたのかもしれません。


それに案外台湾の人たちって、国や職業や性別からくるイメージよりも、そのひと個人が一体どんな人柄なのかを見ている、そんな印象を受けました。マナーや常識はあれど、個を尊重するタイプが多いなぁと。本当、何からなにまで自分の勘違いばかりだったんですよね。



もしこれから台湾へホームステイをする予定があるのなら、日本人らしさを気負いするよりも、自分らしさを大事にしたほうが、何10倍も充実した日々を過ごせるんじゃないかと思います。これが私からの、ささやかなアドバイスです。





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